建築工事業(建築一式工事)の建設業許可の要件

軽微な建設工事以外の建設工事を請け負うには建設業許可を受ける必要があります。
建築工事業の建設業許可の要件を解説します。

※その他の建設業許可業種についてはこちらをご覧ください(建設業許可29種類の業種区分)

建設業許可の要件

  • 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること
  • 専任技術者を営業所ごとに置いていること
  • 不正または不誠実な行為をするおそれが明らかなものでないこと
  • 財産的基礎または金銭的信用を有していること
  • 欠格要件に該当しないこと

建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事のことです。
具体例としては、戸建新築工事、ビル新築工事、商業施設新築工事、建築確認を要する増改築工事等です。

ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は『消防施設工事』ではなく、建築物の管委の一部の工事として『建築一式工事』又は『鋼構造物工事』に該当します。

経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を示すには、経営業務の管理責任者(「経管(ケイカン)」)がいることと、適切な社会保険に加入していることが必要です。

経営業務の管理責任者がいること

常勤役員1人

  • 建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  • 建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として、経営業務を管理した経験を有する者
  • 建設業に関し、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

常勤役員1人+補佐する者

  • 建設業に関し2年の役員等の経験を含む、5年以上の役員等または役員に次ぐ地位の経験(建設業に関する財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当する者)+補佐する者
  • 建設業に関し2年の役員等の経験を含む、5年以上の役員等(建設業以外を含む)の経験+補佐する者

常勤役員を補佐する者

  • 建設業の財務管理の業務経験5年を有する者
  • 建設業の労務管理の業務経験5年を有する者
  • 建設業の業務運営の業務経験5年を有する者

上記の全ての者を置く必要があります

適切な社会保険に加入していること

法人の場合

  • 健康保険、厚生年金は加入必須
  • 労働者を1人以上雇っている場合は雇用保険にも加入

個人事業主の場合

  • 一人親方の場合、請負として働く場合は個人で国民健康保険と国民年金へ加入
  • 常用労働者数が1~4人の場合は雇用保険に加入
  • 5人以上常用労働者がいる場合は健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入

建築工事業の専任技術者(「専技(センギ)」)として以下のいずれかに該当する者を常勤で営業所に置く必要があります。

資格要件

  • 1級建築施工管理技士※
  • 2級建築施工管理技士(建築)
  • 1級建築士※
  • 2級建築士

※が付いている資格は特定建設業許可の専任技術者になることが可能です。

実務経験

実務経験で専任技術者となるためには、10年以上建築一式工事業の実務経験が必要です。

所定学科を卒業して、実務経験が一定期間あること

  • 所定学科の中学・高校卒業の場合は、卒業後の実務経験5年
  • 所定学科の大学・高等専門学校の場合は、卒業後の実務経験3年
  • 所定学科の専修学校の場合は、卒業後の実務経験5年(専門士、高度専門士であれば3年)

建築一式工事業に関する所定学科

建築学、都市工学科

許可を受ける者が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないことが必要です。

  • 不正な行為とは、請負契約の締結又は履行に際して、詐欺・脅迫・横領等法律に違反する行為
  • 不誠実な行為とは、工事内容・工期等について請負契約に違反する行為

財産的基礎の要件は、一般建設業と特定建設業により異なります。

一般建設業の許可

下記のいずれかに該当することが必要です。

  • 直前の決算において自己資本の額が500万円以上であること
  • 500万円以上の資金調達能力のあること
  • 直前5年間許可を受けて継続して営業した実績のあること

特定建設業の許可

直前の決算において、下記のいずれにも該当することが必要です。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金が2,000万円以上であり、かつ、自己資本が4,000万円以上であること

下記のいずれかに該当するときは許可を受けることができません。

1.許可申請書又はその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載がある又は重要な事実の記載が欠けている場合

2.以下のいずれかの事項に該当する場合(役員等、支配人又は営業所の長に該当者がある場合を含む)

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 不正の手段により許可を受けたこと、又は営業停止処分に違反したこと等によりその許可を取り消されて5年を経過しない者
  • 許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行い、その届出の日から5年を経過しない者
  • 許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行った事業者について、許可の取消処分に係る聴聞の通知の前60日以内に当該法人の役員等若しくは政令で定める使用人であった者又は個人の使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者
  • 営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 建設業法、又は下記の法令の規定1に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  • 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの2
  • 営業に関し未成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法人である場合においては、その役員等)が上記のいずれかに該当する者
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者
  1. 法令の規定
    ・「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)」の規定(同法第31条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く。)に違反した者に係る同法第46条、第47条、第49条又は第50条
    ・「刑法(明治40年法律第45号)」第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条又は第247条
    ・「暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)」
    ・「建築基準法(昭和25年法律第201号)」第9条第1項又は第10項前段(同法第88条第1項から第3項まで又は第90条第3項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による特定行政庁又は建築監視員の命令に違反したものに係る同法第98条
    ・「宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)」第13条第2項、第3項又は第4項前段の規定による都道府県知事の命令に違反した者に係る同法第23条
    ・「都市計画法(昭和43年法律第100号)」第81条第1項の規定による国土交通大臣又は都道府県知事の命令に違反した者に係る同法第91条
    ・「景観法(平成16年法律第110号)」第64条第1項の規定による市町村長の命令に違反した者に係る同法第100条
    ・「労働基準法(昭和22年法律第49号)」第5条の規定に違反した者に係る同法第117条(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条例の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号以下「労働者派遣法」という)」第44条第1項(「建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号)」第44条の規定により適用される場合を含む。)の規定により適用される場合を含む。)又は労働基準法第6条の規定に違反した者に係る同法第118条第1項
    ・「職業安定法(昭和22年法律第141号)」第44条の規定に違反した者に係る同法第64条
    ・「労働者派遣法」第4条第1項の規定に違反した者に係る同法第59条 ↩︎
  2. 建設業法施行規則第8条の2
    ・精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者(建設業法施行規則第8条の2) ↩︎

建築工事業と合わせて、大工工事業、内装仕上工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、とび・土工工事等の建設業許可を取得している建設業者がみられます。

※参考:建設業許可をまとめて複数業種取得する

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